国際結婚

国際結婚で知っておきたい婚前契約

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みなさま、こんにちは!

アメリカ看護師のケイです。

「婚前契約を作りたい」―――もし、外国籍の交際相手からそういわれたら、あなたはどう感じますか?

多くの日本人にとって、それは唐突で冷たい響きに聞こえるんではないでしょうか。結婚を控えて幸せいっぱいのときに、もしも離婚することになったら、と考えるなんて・・・離婚する可能性を考えながらの結婚なの?と疑問に思ってしまうかもしれません。

しかし、アメリカを始めとする欧米では、婚前契約(Prenuptial Agreement、通称プリナップ)はセレブリティだけのものでなく、一般家庭でも利用されています。

国際結婚では文化の違いが色濃く出るトピックの1つでもあり、突然この話が持ち上がってどう受け止めればいいのか困惑してしまう人が多いかと思います。

この記事では、私自身の体験を交えながら婚前契約を制度面から解説し、もし提案された時にどう受け止め、どう考えていけばいいのかをお話します。

日本人には馴染みのない【婚前契約】

婚前契約という言葉を初めて聞いたとき、多くの日本人は違和感を覚えると思います。
結婚前に離婚のことを考えるなんて、縁起が悪いし気持ちが冷める…そんな感覚を持つのは当然です。私自身も、婚前契約の話を聞いたとき「なんだか冷たい人なの?」と違和感を抱きました。

一方で、アメリカでは事情がまったく違います。離婚率は40~50%とも言われていて、しかも州ごとで財産分与のルールが違うので、婚前契約は『もしもの時に備える、合理的な準備』として広く受け入れられているようです。

日本でいう、生命保険や火災保険に近い感覚で、『備えておけば安心』という考え方なのです。

婚前契約をめぐる私自身の体験談

私の夫はアメリカ人です。
義父は自分も婚前契約をしており、「結婚するなら必ず作るべきだ」と息子=私の夫に教えていました。
しかし義母は真逆の立場で、「結婚前から離婚の話をするなんて、絶対に嫌」と考えるタイプ。2人は離婚をしているため、その対比がより鮮明でした。

夫自身も、私と付き合い始めたころは「婚前契約を作る」と当たり前のように思っていたそうです。

付き合いだしてから1年後、同棲を始めたころに生活費や旅行費用などを払わなくて良いと言われました。その時は単純に「なんて優しい人、ラッキー」くらいにしか考えていませんでしたが、夫には考えがあったようです。

当時、私は日本の病院で病棟看護師として働いていました。夫は病棟看護師の大体の年収を調べて自分の給料と比較し、収入差があるということで私に「貯金ができるように」と、生活費を免除する提案をしたそうです。

3年の交際を経て婚約した際に、お互いの収入や資産を公開しあう中で、婚前契約の話が初めて浮上しました。
昔に海外ドラマで婚前契約についてのシーンを見たことを思い出し、「一般人でも婚前契約って本当にするんだ」と、とても驚いたと同時に、結婚前から離婚の際の決め事をしなきゃいけないことに寂しさを感じました。

話し合いの末、「たとえ離婚したとしても財産は平等に分けよう」という考えに落ち着き、最終的には契約を作らないことを選びました。

ルールを決めておけば後々のトラブルは避けられるのかもしれません。でも、安心材料というよりも冷たい響きの印象の方が強く感じました。

日本とアメリカの制度の違い

ここで、日本とアメリカの制度の違いを説明しておきます。

日本の制度

夫婦財産契約と呼ばれる民法があります。結婚前に契約を結び、公正証書として登記することで法的効力を持ちます。
ただ、実際に利用する人はごくわずかで、多くの夫婦は法定財産制に従います。
これは、結婚中に築いた財産を夫婦2人のものとみなし、離婚時に平等に分けるというものです。結婚前からの財産や相続財産は、平等に分ける財産の対象外になることが多いです。

アメリカの制度

州ごとに制度が違います。
カリフォルニアやテキサスのようなコミュニティプロパティ制(Community Property)の州では、結婚中に得た財産は原則50:50と平等に分けます。
ニューヨークのようなエクイタブルディストリビューション制(Equitable Distribution)の州では、必ずしも平等に分けるのではなく、収入差や結婚年数、家庭への貢献度などを考慮し、”公平”に財産を分けるよう裁判所が判断します。

日本の法定財産制とカリフォルニアなどのコミュニティプロパティ制は少し似たところがありますね。
同じ離婚でも制度によって、結果が大きく異なる可能性があるので、婚前契約を必要とするのかなと思います。

国際結婚ならではの難しさ

国際結婚の難しさは、財産や収入が1つの国からだけとは限らないという点です。たとえば、日本に不動産、アメリカに銀行口座や年金がある場合、どっちの国の法律を適用するかで財産分与の割合が変わってきます。

主に、夫婦が住んでいる国の法律が基本的に優先されます。ただ、財産が置かれている国の法律が適用されることもあり、ケースによっては2つの国の法律が使用されることもあるようです。

私は当時、このような法律の複雑さなどを知りませんでした。だからこそ婚前契約という言葉を聞いたときに、冷たさを感じてしまったのだと思います。だけど、知識があれば自分を守る契約なんだと、もう少し冷静に考えられたかもしれません。

婚前契約を提案されたときに大切なこと

婚前契約の話をされたとき、最初に意識することは『文化の違いとして受け止めること』です。
相手が疑っているのではなく、リスクを減らすのは当然のことという感覚を持っているだけかもしれません。

その上で、「なぜ必要なのか」を丁寧に聞くことが重要です。
守りたいのは不動産やビジネスかもしれないし、あるいは自分の借金から相手を守ることかもしれません。
婚前契約は自分を守るためだけのものではなく、相手を守るためのものでもあります。

契約書を作成する際は、お互いがそれぞれ弁護士を立てるのが基本です。相手が作成した契約書にそのままサインするのは公平ではないと、後々の裁判で無効とされるリスクがあります。
さらに、契約前にはお互いの資産や借金などをすべて開示することも必須です。もし、隠された財産や借金が後から出てきた場合は、契約自体が崩れることになってしまいます。

覚えておきたいポイント
  • 婚前契約は文化の差であり、不信感ではない
  • 「なんで必要なのか」を冷静に聞く
  • お互い、弁護士が必要
  • 契約前に資産と借金をすべて開示する
  • 自分を守る契約にもなる

日本とアメリカでの温度差

日本では、婚前契約はあまりポジティブなものとして捉えられていないため、作成する夫婦はほとんどいません。
一方で、アメリカでは再婚や自営業の人を中心に、一般的な準備として定着しています。

ただ、最近は日本でも共働きが増えていたり、晩婚化の影響で資産を持った状態での結婚が増えていることが理由で、契約書を作る夫婦や、相手にどう切り出せばよいかという相談も増えているようです。

私自信も、夫から話をされた時はどう受け止めればいいかわからず不安な気持ちになりましたが、調べていくうちに「アメリカでは普通のこと」と理解できるようになりました。

義父のように「絶対に作るべき」という考えの人もいれば、義母のように「そんな話はしたくない」と拒否する人もいます。結婚相手だけじゃなく、その家族の考え方にも大きく左右されるのだと思います。

まとめ

婚前契約は日本人にとってまだ馴染みが薄く、冷たく感じられるかもしれません。けど、国際結婚では、相手やその家族から突然提案される可能性もあります。
そのとき、知識がなければ戸惑いや不信感で終わってしまいますが、理解していれば文化の違いとして受け止められるはずです。

大切なのは、契約書を作る作らないではなく、相手がなぜ必要と考えているかを知り、自分にとっても納得できるのかを話し合うことです。

もし突然その話が出ても、慌てずに冷静に対話できる準備をしておくことことが、国際結婚を長く続けるためのファーストステップになるんだと思います。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

この記事が、あなたのお役に立てたら嬉しいです。

ABOUT ME
ケイ
ケイ
看護師(アメリカ・日本)
看護師歴8年目で、うみのむこう「アメリカ」へ移住。 アメリカ看護師試験、妊活、国際結婚のリアルを、体験談を交えて情報をお届けします!
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